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595 本当にあった怖い名無し New! 2007/07/28(土) 22:38:04 ID:BU8a3ua+O今から数年前,僕と僕の友人だった人間が、学生だったころの話。ときは夏休み、自由研究のため、友人…仮にナナシとするが、僕はそのナナシと、 
「心霊現象」について調べることにした。 
ナナシはいつもヘラヘラしてるお調子者で、どちらかといえば人気者タイプの男だった。 
いるかいないかわからないような陰の薄い僕と、何故あんなにウマがあったのかは、今となってはわからないが、とにかく僕らはなんとなく仲がよかった。 
なので自由研究も、自然と二人の共同研究の形になった。 

また、心霊現象を調べようと持ち掛けたのは、他ならぬナナシだった。 
「夏だし、いいじゃん。な?な?」 
しつこいくらいに話を持ち掛けるナナシに、若干不気味さを感じながらも、断る理由は無かったし、僕はあっさりOKした。 
そのとき僕は、ナナシはそんなにオカルト好きだったのか、そりゃ意外な事実だな、なんて、くだらないことを考えていた。 

「どこ行く?伊勢神トンネルとか?」 
僕は自分でも知っている心霊スポットを口にした。 
しかしナナシは首を横に振った。 
「あんな痛いトコ、俺はムリ」 
そのナナシの言葉の意味は、 
僕は今も理解ができないままでいる。 
何故「怖い」ではなく「痛い」なのか、今となっては確かめようがない。 
だが、ナナシは確かにそう言った。 

話を戻すが、ナナシは僕が何個か挙げた心霊スポットは全て事々く却下した。意見を切り捨てられた僕は、いい加減少しムッとしてきたが、ちょうどそのとき、ナナシが言った。 



596 本当にあった怖い名無し New! 2007/07/28(土) 22:41:01 ID:BU8a3ua+O「大門通の裏手に、アパートがあるだろ。あそこにいこう」 

そのアパートの存在は、僕も知っていた。 
もっとも、心霊スポットだとかオカルトな意味じゃない。 
天空の城ラピュタとかに出てくるような、 
蔦や葉っぱに巻かれたアパートで、特に不気味なアパートってわけではないが、入居者はおらず、 
なのに取り壊されることもなく、数年…下手したら数十年、そこに在り続けているアパートだ。 

「あんなとこ行っても、なんもねーじゃん。幽霊がいるワケじゃなし」 
「いいから。あそこにしよう。」 
ナナシは渋る僕を強引に説き伏せ、 
結局、翌日の終業式のあとに、そのアパートに向かうことになった。 

時刻は午後4時36分。 
僕らはアパートの前にいた。終業式を終え、昼飯を食べてから、 
しばらく僕らは僕の部屋でゲームなんかをしたりした。 
何故すぐにアパートに向かわなかったのか、 
向かわないことを疑問にも思わなかったのか、 
あの時の僕にはわからなかったし、今の僕にもわからない。 
ただ、すぐにあのアパートに向かわなかったことを、僕は未だに後悔している。 
否、あのアパートに行ってしまったことを、 
後悔してるのかもしれない。 

とにかく、しばらく遊んだあと、唐突にナナシが 
「さ、そろそろかな。」と言い、僕はナナシに手をひかれてあのアパートに向かった。 
そのときのナナシの横顔が、なんだか嬉々としていたような、 
逆に悲しげなような、なんとも言えない表情だったことを、 
僕は忘れないだろう。 

597 本当にあった怖い名無し New! 2007/07/28(土) 22:44:10 ID:BU8a3ua+Oそして、僕らはアパートに着いた。 
ナナシはひと呼吸置くと、 
「終わった、な。」と言った。 
その言葉の意味がよくわからなかった僕は、 
ナナシに聞き返したが、ナナシは無言のまま僕の手を引いた。 
いつものナナシじゃない、お調子者のナナシじゃない。 
そんな不安が胸元にチラついたが、ナナシは構うことなく 
アパートの階段を上る。そして、 
「302」とプレートのついた部屋の前に立った。 
異様な空気が、僕の背中を掠めた。 
「ナナシ…?」 
ナナシは答えないで、ドアの前にあった、 
枯れた植木鉢から鍵を取り出し、ドアを開けた。 

すると、そこには。 
「人間だったもの」が、あった。 
「うぁあぁあぁあっ!!!」 
僕は大声を上げてヘタリこんだ。 
玄関先には女のひとが倒れていて、はいずるように俯せている。 
その体の下からは、夥しい量のまだ生々しい赤黒い血が、水溜まりのようになっている。 
僕はガタガタ震えながら、ナナシを見た。 
でも、ナナシは、 

「あはははははははははははははははは!!!!!!」 

笑っていた。 
599 本当にあった怖い名無し New! 2007/07/28(土) 22:49:10 ID:BU8a3ua+O僕はナナシが発狂したのかと思ったけど、そうじゃなかった。 
「見ろよ!!これが人間の業なんだよ!!ラクになりたくて死のうとしたって、 
死ぬことにまだ苦しむんだ!! 
この女、2日も前に腹をかっさばいたんだぞ!!2日だぞ!! 
2日も死ねなくて、痛い痛いって死んだんだ!! 
痛い苦しい助けてって、声も出ないのに叫びながら死んだんだよ!!!!死にたくなって腹を切ったのに、死にたくないなんて我が儘もいいとこだ!!」 

ナナシが早口でまくし立てる。僕は、死体よりも、血よりも、何よりも、ナナシが凄くこわかった。 
「死にたくないなら死ぬんじゃねぇよ!!!!死にたくなくても死ぬんだから!!!! 
馬鹿馬鹿しいにも程がある!!! 
神様なんていやしない!!!助けてくれるやつなんか、 
世界が終わっても来やしないんだよ!!!!」 
ナナシは叫び続けた。僕はナナシに必死にすがりついて、 
わけのわからないことを口走りながら、泣いた。 
しばらくして、我にかえると、ナナシが僕の頭を撫でていた。 
「警察、呼ばないとな。」 
ナナシは、そう言った。さっきまでの凄まじい形相のナナシはいなかった。 
でも、僕の友達だった、ヘラヘラ笑うお調子者のナナシも、 
もうどこにもいなかった。 

僕らは警察を呼び、簡単に事情を聞かれて、家に帰された。僕らは一言も口を聞かぬまま、 
別れた。 
その日、僕はいろんなことを考えた。 
何故、ナナシはあのアパートに行こうと言い出したのか。 
何故、ナナシはあの女のひとが2日前に自殺を図ったことを知ってたのか。 
何故、ナナシはあの部屋の鍵の場所を知ってたのか。 
ナナシがつぶやいた、「終わったな」って、なんだったのか。 

601 本当にあった怖い名無し New! 2007/07/28(土) 22:51:53 ID:BU8a3ua+Oオカルト的な考えになるが、きっとナナシは、死人の声みたいなものが聞こえるんだろう。 
死ぬ間際の、断末魔なんかが聞こえるタチなんだろう。 
ナナシが「終わったな」って呟いたとき、 
あの女のひとは死んだんだろう。鍵の場所も、あの女のひとの生き霊みたいなものが、 
助けてほしくて、教えてくれたんだろう。 
でも、僕らは間に合わなかったのだ。 
僕はそう考え、凄く悲しくなった。僕らが間に合わなかったせいで、 
あのひとは死んだんだ。まだ、助かったかもしれないんだ。 

僕らが早く行っていれば-- 

そこまで考えて、僕はひとつの疑問が浮かんだ。 
もし、もしさっきの仮説が正しくて、ナナシに不思議な力があるなら。 
何故、ナナシはすぐにアパートに向かわなかった?何故、ナナシはすぐに警察なり救急車なりを、昨日の時点で呼ばなかった? 
否、否否否。ナナシが早口でまくし立てていただけで、 
本当に自殺かどうか、実際はわからない。 
まして、あの部屋には、血溜まりと死体はあっても、凶器なんかは見当たらなかった。 

否、否否否。それ以前に、それ、以前に。 
僕らが部屋に入ったあの時点で、本当に、あのひとは死んでいたのか? 
もし、まだ死んでなかったなら。そして、自殺じゃなかったなら、 
そこまで考えて、背筋が凍った。 
それからしばらく、僕はナナシとマトモに喋ることができなかった。 
その後、ナナシと僕はある事件をきっかけに永遠の断絶を迎えるが、 
それはまた別の話。 
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